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2016年11月24日
「あなた、毎日適当~~~~~に、仕事していませんか?」
「とりあえず行って来いって言われたし」
「眠たい・・」
「研修とか講義は苦手~」
「人と一緒で緊張するからヤダな・・」
研修開始前5分の表情はそんなことが言いたげだ。
「接客マナー研修」と聞けば、まじめで厳しい内容を想像するからか。嬉々として参加する人は少なめ。皆、かったるそうで、実はやや緊張しているのがわかる。
接客サービス業は相手のあることだから、しっかりとした基本スキルが要る。近年、主に若年者の基本マナー(表情やリアクションや言葉遣いや振る舞い等)がおろそかになっているため40歳より上の世代の方の嘆きをよく聞く。
接客の大会でも「言葉遣い」は綺麗にできていなければ受賞はあり得ない。言葉は心に直接響くから、正しい言葉と聞き心地がいい話し方が求められる。しかし現実としては近年、接客サービスでお給料をもらっているスタッフがそこは最低限できなければいけない、という大前提は崩れ始めている。
なぜか。
言葉遣いをこれまでの生活の中で身に着けていない人材が圧倒的な数になってきているからだ。社会に出て急にできるようになるわけがない。なぜなら彼らの数年(もしかしたら10年!)先輩たちも完璧に出ている人はほとんどいないからだ。いつの世も多数派が主導権を握る。昔からある敬語や謙譲語や丁寧語、美しい日本語に価値を感じない人材が多数になっているのだ。言葉遣いなどに代表される日本的なマナーが上手に出来るようになりたい、と、一体どのくらいの人材が思うのか。ほとんどが思わないだろう。
「すべき」で教育しても全く響かない時代になっている。「なぜ出来るほうがいいのか」が教育に抜け落ち形骸化している。消費者の世代も交代が進み、受ける接客にかしこまったマナーを求めておらず、価値を置かない。それどころか、なぜ仕事をするのかさえ、大義が消失している。
どうすれば人材が育つのか。人材が育たなければいろんな意味で日本の未来(経済や人心)はかなり暗いのが現実だ。
研修ではこう切り出す。
「日々やっていることで一番大切な仕事はなんだと思いますか?」
大多数が答えられない。教えられていないからだ。
答えは「ファンづくり」である。
サービス業であるからにはファンがいなければ利益が出ず廃業だ。その商品やサービスと「混然一体」になっていないつまらない販売員から、いったい誰が物を買うのか。流通サービス業の課題は、形骸化したマナーではなく、現場のファンづくり力である。その現場にあったオリジナルのマナーがあればお客様は満足しリピートする。あとはコスパだろう。出すお金に見合った価値が感じられなければ、素晴らしい販売サービススタッフがいても買わなくなるだろう。
研修に戻ろう。
まず市況を伝える、厳しいですよと。
消費者のモノやサービスを買う心理を伝える。根底にあるのは「不安感」だと。
それでは私たちは何をすればいいのか。それを伝える。
「一つでもいいから、自分が毎日出会うお客様に良い「影響」を与えること。毎日、仕事を通して自分は「影響」を与えられたか?赤の他人に心の栄養や喜びを与えられる人間になれたか?それをいつもいつも考えて」
受講者の顔が、視線が、体が、全員こちらを向く。
ある人は真剣に、ある人は府に落ちた表情、
ある人は目が輝きだし、頬は紅潮している。
この瞬間が全てだ。
この瞬間が大好きだ。
何かの影響を、まぎれもなく自分が与えた瞬間だ。
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